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第1章 値段は夜、決まる

ロンドン時間で参加する意味

 ロンドン時間に取引されているものを、この本では特にロンドン市場と呼んでいる。なにも物理的にロンドンに住所のある取引所でなければならないということではなく、ロンドン時間に手を出せるものは、すべてロンドン市場と呼ぶことにしているのだ。したがって、東京証券取引所のナイトセッションやシカゴの取引所の24時間電子取引などもすべてロンドン市場と呼ぶことにする。

 1990年代に為替市場で猛烈に円高が進んだ。一時は1ドルが80円を割り込んできて、日本中が、国際競争力の低下による経済の停滞を心配したものだ。東京時間の昼間は、これを見過ごせない日本の当局も一生懸命、円高阻止の市場介入を実施した。しかし効果があるのは明るいうちだけで、夜になると元のレベルに戻ってしまい、ひどいときにはさらなる円高が進行してしまうこともよくあった。結局、自国通貨である円の値段であるはずなのに、「日本人が自らの力でその価値すらも決定できない」といって嘆いている時代だったのだ。

 また、同じ時期に日本の株式市場ではバブル経済の崩壊もあって、株価がさえない時期が長く続いた。ロンドン時間でアメリカの株価が下落すると、翌日の日本の株価は、一緒に安くなることを強いられた。株価というものは、そもそも世界的な連動性が強いので、ロンドン時間に取引をしない日本の株式投資家にとっては、明けて朝が来るたびに下がっていく株価をただじっと見ているしかなかった。