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第4章 ドル円相場のシュミレーション

値動きと実践問題 @情報で動く編

情報で動くというのは、現状の需給に関係なくニュースなどによって動く場合です。「材料が出た」などともいいます。政治・軍事にからむ突発ニュースもあれば、あらかじめ予定されている時間に公表される経済指標の類もあります。みんなが知っている情報では相場は動きません。「価格に織り込まれている」という言い方をよくします。それに比べてフレッシュな材料には市場は過敏なほど反応します。

経済指標を例にとってみましょう。

指標自体には極論すれば「前回値」、「今回予想値」、「今回発表値」の3種類があります。市場のコンセンサスは予想値に集約され、実際の発表値との差だけが問題となります。ですから前回より改善していようと悪化していようとあまり問題ではなく、それ自体が予想値としてすでに価格に織り込まれてしまっており、実際に発表されたものはその通りであっても市場はそれほど反応しません。しかし、予想と違うものが発表された場合はたいへんです。それに向けてのポジション調整が起こり、相場を大きく動かす力となるのです。つまり、どんな材料であれ、人の予期しないことが起こったら、文句なく相場は走り出してしまうということなのです。

先ほどの例で説明しましょう。今しがた、中国当局より人民元の切り上げ発表がありました。直後から急激に円高になって来ています。人民元の切り上げによって円高に動くのは、実際にはほとんど売買できない、ほとんど為替市場に流通していない人民元がドルに対して値を上げることをカバーしなければならない需要が将来たくさん出てくるのを見込んでのことなのです。アジア通貨の代表である円を買って代替するという方法が取るのが常套手段にならざるをえないため、円独自の要因でないにもかかわらず、副次的に円が上がるということを意味します。

またこの情報がすでにどれだけマーケットで織り込まれているかによっても、動く値幅は変わって来ます。1年以上に渡って何度も人民元の切り上げについて話が出ている場合、その度に円高にシフトしているはずですから、全く「寝耳に水と」いう中でそのニュースが出てきたわけではありません。いわゆるサプライズの強弱によっても相場に与えるインパクトは違ってくるのです。

1980年代はよく「ケ小平死亡説」が為替市場で流れて、そのたびにドル円はよく振らされましたが、実際に死亡したときはたいした影響はなかったことは記憶に新しいことです。

では実際に、2005年7月21日の人民元切り上げ発表があった際の値動きを使ってみましょう。

(問題1)
では、あなたはこのニュースが発表になって、しばらくは110.70あたりでウロウロしています。 さあ、ここからどう入りますか?

(筆者の解答)
こういう情報で動く場合には、瞬間的に一方方向へ強く動きやすいものです。また一方方向へ動いた後、その反動も来ることも多いのであまり深追いすることはお勧めできません。例え円高方向へ動いていくにしても、一旦止まって反転した後でまた本格的に円高方向へ動くとみる方が妥当でしょう。したがって一旦止めた後に、再度反転のポイントを見計らって、再度円高方向へ向けて入るタイミングをうかがう姿勢でよいと思います。もちろん、円高材料なのでドル円はショートに振ってみるわけですが、相場がバタバタしているときは火事場ドロボーのような連中も多く出現するので、「110円台になったら売り」とかいって絶対レベルにこだわるようなことはせずに、値動きを中心に考えるトレードを心がけるのが安全だと思われます。反対方向に行き出したら、損切ってもういちど出直すくらいの気持ちで相場に入ったほうが良いように思われます。

情報の大きさとしては、大きい事ですし中期トレンドとしてドル高になりにくい要素ですので、その点を基本ポイントとして捉えておきましょう。しかしトレンドと目先の値動きとは必ずしもきれいに一致しないものですから、トレンドに合っていればいつ相場に入っても大丈夫などと思わずに、常に入るタイミングなどを考えながら見ていくようにしましょう。

また他の相場も同時にウオッチできる余力があれば、債券相場や株式相場の進行具合も参考になります。それらの市場で値段が進むのを止めてしまっていたら、為替相場だけが進み続けることはありえないわけですから、相場の入りどころを見る上では役にたつものなのです。