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第6章 リスクのとり方と考え方

リターンを得るためには行動しようと思えば、必ずその裏側にはリスクというものが存在します。何をするにもリスクは避けて通れないものです。極端にいえば生きている限り、あらゆることにリスクは存在します。現実の生活の中ではリスクのひとつひとつをいちいち認識しなくても行動できるように脳のメカニズムが働くようになっていますが、日々大きいものから無視できるほどの小さいものまでさまざまにリスクの囲まれています。

気がつかずに行動はできても、その認識しなかったリスクが後になって自分の首を絞めるようなこともありますし、逆に認識がないために大胆に行動ができて良い結果をもたらしたということだってたくさんあり、誰でも思い当たる節があると思います。

日常生活における何げない行動も、おのずから‘リスクとリターン’という考えに基づいて行われてわれています。たとえば「ローンを組んで家を建てる」、「脱サラしてベンチャー企業を打ち立てる」、「タバコの本数を減らす」、「暴飲暴食をしない」など、これらはすべてより豊かな暮らしがしたいとか、より快適に長生きをしたいというリターンのために、目先の苦痛や楽しみを我慢するというリスクを感受しての行動です。もちろん自分の生存に関わるような重大なリスクは、生物として生きていくためにきちんと認識し、避けて通るよう行動するように習性づけられているのはいうまでもありません。自殺でも考えない限り、わざわざビルの屋上から飛び降りたり、走ってくる電車に向かって突進するような行動は取りません。

リスクをとらないところには、リターンはありえません。 大きな果実を手にした人は必ずといってよいほど、大きなリスクをとっています。だからといって年がら年中、気を張ってリスクのとりっぱなしというのも精神的に疲れてしまいますし、何でもかんでもリスクをとりに行って挙句の果てには何も残らないどころか大きな損失だけが残ってしまうということもあります。リスクというものは上手にとるように努めることが人間の生きていくうえでの知恵です。自分の体や軍資金がダメにならないように工夫しながら、うまくリスクとつきあうべきでしょう。

われわれが今やろうとしているリスクをとるということはいうまでもなく、外国為替の相場でポジションを持つことであり、リスクは損失を出すことであり、リターンは儲けを捻出することです。損を出さずに儲かることだけに終始したい、これは誰もが抱く希望ではありますが、実際にはありえないことです。では、避けられない損失というものをどのように管理し、また最終的にお金が残せるようにするためにはどう運んだらよいか。 それがこの章での重要なテーマです。

神様でもない限り、絶えず上下動を繰り返している相場のなかにあって、瞬間的にも損をこうむらずにポジションをキープすることは出来ません。相場に入る前に、あらかじめ「これくらいなら、最悪やられてしまってもいいかな。」といった損失限度額があるはずです。この限度額を守ることが出来るかどうかが、明らかに存在するリスクにきちんと対処できるかどうかの分かれ道です。

「自分は相場が上がると思うから買っているのだ」と思うでしょう。でも先のことはわかりません。「いまが底だと思ったから買ったのだ」と思っても、そこで相場が下げ止まってくれて反転上昇するなどという保証はどこにもありません。そこで、自分に自信があろうとなかろうと、ストップ注文が大切だということになります。長期ポジションになってもいいのでとストップをおかずに相場に入る人がいます。しかし実際のところはどうなのでしょう。ストップ注文は自分を最悪の事態から守ってくれるだけでなく、ポジションがいったんなくなってしまうため、それまでの相場観に引きずられなくなります。自分を守ってくれる命綱であるばかりでなく、これによってゼロベースの見方で次の相場に入っていくことが出来るので、次に儲けるための機会損失を避けることにもなります。

たしかにストップ注文を置きたがらないという人は多く、損失が確定することを極端に嫌っているように見受けられます。また相場というものは待っていれば少なくとも元のレベルにくらいまでは戻るのだということに根付いているようにも見えます。この場合の心理状態で起こりがちなのは、100万円の評価損を出しながらも、相場が戻ってきて同値近辺までくるとやめてしまい、「やれやれ」とほっとするケースです。取引手数料を除いても1万円でも残すことが出来たならば、なにか大成功でもしたかのような錯覚に陥ります。

しかし世の中に、100万円やられるリスクで、1万円の儲けを取りにいくというようなファンドがあったら、あなたは投資しますか? リターンの少なさもさることながら、リスクのとり方にも問題があると考えるべきです。もしも損失を確定することを恐れずに、損切りをきちんと行っていれば、下げの100万円を取りに行く事だって出来たわけですし、その後の100万円分の上げをも取れたかもしれないという、機会が存在していたのです。

収益目標、たとえばこの取引きで10万円を儲けようと思ったならば、最悪でも10万円以上やられることは許されません。実際には10万円もやられることは出来ないはずです。なぜなら勝負が5分5分であった場合には、手数料等を加えてお金の残る予定が立たないからです。ですから、予定される収益に見合った損失限度額を設ける必要があります。損失限度額を遵守するためには、ストップ注文を例外なく置くことしかありません。

ただ闇雲に行動して、「気合があれば、命綱は切れない」とか「自分には神様がついている」などと思い込んで、みすみす落とし穴に落ちるような愚は避けなくてはいけません。大切なことはリスクが存在することをまず認識し、たとえそのリスクが顕在化しても自分の存亡にあたっての致命傷にならないように行動し続けることです。そうすることによって、必ず傷は癒えますし、癒えればまた新たに大戦を始めるための確信がもてるようになります。

ある機会にすべての運命をかけるような神風的な方法では瞬間的に大きく儲けることができたとしても、このリスクにた対する考え方がしっかりしていない場合、時間が経ってみたら悲惨な結果でおわっているということも多々あるように感じます。とにかくあなたがマーケットを通してお金を増やし残していけるかどうかは、リスクの認識とそのコントロールいかんにかかっています。

リスクマネージメントというものは後ろ向きなことでもあり、不慣れな間は精神的にも苦痛が伴うことです。しかしながら、どんなに勇敢な人であっても自動車がスピードを出して行きかう道路の赤信号を、無理に突っ込むことはしないはずです。そうした日常生活において気がつかずにやっているリスク回避と同じくらいに、相場に向かうときもそれを自然に心がけることが出来れば、本書の目的の大半は達成されたようなものです。これから、リスクとして認識して欲しいこと、コントロールすべきことを説明しますので心に留めておいてください。