HOME > 外国為替について > 第6章 リスクのとり方と考え方 > 相場の値動き

第6章 リスクのとり方と考え方

相場の値動き

マーケットで商いされる値段は、政治・経済をはじめとするお金の動きに関係するあらゆる事柄についての現在と未来を織り込んだ結果なのです。 ただしマーケットは常に先を見ているものですから、少しでも早く先のことを価格に織り込もうとします。何か大きな事件が起こった時も、マーケットの方が必ず先に反応します。マーケットを見ていれば何か異変が起こった場合、大概流れてくるニュースよりも先気づきます。値段が動くことによってお金を生み出す市場なのですから、何よりもまっさきに情報に接することが出来た人が飛び込んでくるのです。昨今はテロが世界のあちらこちらで起きています。「テロが起こった」などと判明するのはかなり遅れてであって、それにいたるまでに相場はかなり極端な動きを示したりします。逆に相場によって時事を知ることが出来、なにが起こっているのか確認しようという意欲がわくのです。

ニュースで流れるコメントが、みな今の現状分析から円高に行くという内容であっても、違う要素の芽が出てくれば、マーケットはいち早くそれを価格に織り込もうとしますし、そのレベルがどこまでであるのかをマーケット自身が確かめる動きをします。ですから毎日マーケットは朝聞くニュースのコメント解説とは違う動きをするものなのです。

マーケットにおいては値段だけが真実であり、マーケットは常にその時々の真実を忠実に追い求めているように感じます。真実を求めてさまざまことをいち早く織り込もうとするのがマーケットの性質です。ですからどんなに大きな要因のファンダメンタルに基づいたトレンドがあったとしても、一直線にそのトレンドを描くことはありえません。大きなトレンドの中に常に大小さまざまな波があり、小さく、時には大きく流れを変えながら真実を追求すべく、トレンドなるものを常に作り続けているのです。

このような大海原を小さな船で航海に出ると思ってください。その船が大きいか小さいかの違いがあるだけで、大型最新鋭のタイタニック号でも誤れば沈没しますし、小さな漁船でも上手く航海して大陸に到着できます。大きなトレンドとして自分が正しいと思う方向で相場に入ったとしても、その瞬間に潮の流れが反対に行くこともあります。その時にはこっちの方角に行く先があるのだからと決め込まずに、すぐに撤退して非難する必要があります。そして次の行くべき方向への潮が流れてきた時を待つのです。

少し話しを抽象化しましたが、そのくらいリスクマネジメントのためには、マーケットの値段や値動きには敏感になるべきだと思います。マーケットに対峙する時に陥りがちな心理構造のひとつに、劣勢になったときに現実の評価損失には目を背けて、目の前で起こっていることが間違っているのだと解釈し、そのうちなんとかなると希望的な観測をもつことでリスク認識を回避しようとすることがあります。

確かにトレンドが間違っていない場合、ずっと保有していれば多少の評価損に苦しむことがあっても、時間が解決してくれることはあります。しかし繰り返しになりますが、その時間の間にどれだけの収益機会をロスするかを考えてみる必要もあります。

例をあげて比較してみましょう。

(チャートでの例1)

単純にいえば、最初の110円で売ったものが、108円になれば結果として、途中経過のなかでどんなに評価損が出たとしても、最終的な実現益はプラスになります。

(計算式@)

(110円 − 108円)×10万ドル = + 200,000円

しかしもしもずっと持たずにこの相場の波の中で、売り買いを繰り返していたら、1回に取れる金額は@より少なくても、結果として残る金額はプラスになります。

(計算式A)

1(110.00−111.30円)× 100,000ドル = − 30,000円
2(112.10−110.80円) × 100,000ドル = 20,000円
4(113.80−110.10円) × 100,000ドル = 370,000円
6(111.90−110.00円) × 100,000ドル = 190,000円
8(110.00−110.25円)× 100,000ドル = − 25,000円
10(110.85−108.00円) ×100,000ドル = 285,000円

損もありますが、トータルでみると810,000円となり、同じ期間、同じ元手でも結果は@とはずいぶん違います。また最初に110円に売った後、114円近辺までアゲインストになっているので、その際40万円近くの損を抱えていたことになります。リスクが40%でリターンが20%であれば、リスクリターンのバランスが良くないのは今までもお話してきましたよね。

またもしも途中で、相場が下記のようになっていたらどうなるでしょう。

(チャート2)

反転して戻って円高にならず、そのまま116円台に行ったチャートを作成。

この時点で止めていることによって、新たにポジションを持ってこの波を取りにいくことができますが、@であれば身動きが取れない状態になってしまい、かつもっと反対に行った場合には大きなロスを出して損切ることにもなりかねません。

とくに外国為替の場合は、絶対的なモノの値段ではなく、通貨同士の相対的価値の上下でしかありません。だから、動き出すと不思議なくらいに大きく動いてしまう性質をもっています。値動きをしっかり見ながら適宜止めていくということは、自分の大切な財産を失くさないよう守っていく上でとても重要なことですし、損失も出しながらも利益を出していくように努め、大きな流れに乗れる瞬間を待ちます。そうすると気がついたときには資金は着実に増えているものなのです。

マーケットの値動きは自分の思った方向へは必ずしも行かないものですし、自分が思った方向へマーケットを動かすことなどもできません。マーケットというものはいったん入ってしまえば、後は人がやるだけのものといっても過言ではありません。あとは静かにマーケットが自分の考えている方向へ潮を流してくれているかどうかだけを見極めつつ、どうも今は違うと思えばすぐに撤退することです。