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第9章 己を知る

ナンピンの誘惑

買ってみたものの相場は下がる。シコリを損切りせずに、さらに安くなったところでもう1枚だけ買う。これを「ナンピン買い」というが、始めに買ったときよりも安くなっている分、評価損に目をつぶれば、とても買いやすい。しかも平均の購入コストが下がっている分だけ、逃げられるまでの距離が小さくなっている。やられて評価損を抱えて困っているときには、より魅力的に映ってしまう。しかしそこが落とし穴なのだ。

ナンピンしたところで評価損の絶対額は少しも減らない。体力が弱っているところなのに、ポジションは大きくなってリスクは増大している。しかも、ナンピンしたくなる主な動機は「待てば相場が元に戻る」という自分勝手なシナリオに基づいていることが多い。戻らなかったらどうなるのか。日々、コツコツと貯めてきた利益などは一瞬のうちに飛んでしまう。最悪の場合は持ち金すべてがなくなってしまうかもしれない。

現物の有価証券の取引では、満額すべてを支払って購入しているので、購入資金があるのであればナンピンしたって構わない。現物の株式の場合、相場がいくら下落したところで証券の価値はゼロ以下にはならないと割り切れば、それで済む。

しかし日経先物のようにレバレッジの高いものの場合、証拠金などはあっという間に飛んでしまう。無限に評価損を膨らませる可能性があり、ナンピンは慎むべきであろう。ナンピンしなくてはいけなくなる前に、素直に負けを認めて損切りを実行すべきである。

ギャンブル依存症といって、損をしてもギャンブルのスリルが止められずに行い続けるというものがあるが、マーケットでの行動はこのようなスリルを味わうために行うためにあるのではなく、真剣にお金を残し作るためにあるのだということ忘れないようにしよう。