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第4章 価格で見たアプローチ

いろいろな株価分析

値段から情報を得る方法を価格分析という。価格分析では「値段は絶対にウソをつかない」という認識が底流にある。まずそもそも株価とは何かを考えてみよう。

株価を理論的に裏づけるものの代表例として、株価収益率(PER)、純資産倍率(PBR)、株主資本利益率(ROE)、一株あたり利益(EPS)という数値がある。

(PERの計算式)
PER =  株価  ÷  1株あたりの税引き後純利益

(PBRの計算式)
PBR =  株価  ÷  1株あたりの純資産

(ROEの計算式)
ROE =  税引き後純利益  ÷  株主資本  × 100

(EPSの計算式)
EPS =  当期純利益  ÷ 発行済み株式数

個々の企業の株価について計算され、株価の参考としてネットトレーディングなどのツールにもすぐに出てくるようになっている場合もある。確かに同業他社の株価との比較して、割安か割高かということを見ていくうえで利用できるが、そもそも株価そのものについては説明してはくれない。PER20倍のA社とPER30倍のB社では、B社の株式は1株あたり利益の30倍の値段で取引され、A社の株式は1株あたり利益の20倍の値段で取引されているということになる。したがってA社のほうが、割安であるという判断になるわけだが、安いのには、何か他に理由があってのことかもしれない。

そもそも1株あたり利益の何倍まで値段で取引されるのが妥当かということは、誰にもわからない。単純に考えれば、ある企業が1年間に得た利益の30倍の値段がついているということは、30年後に初めて利益分と同じ値段になるということになる。計算式など論理的にみえるもので示されるともっともらしく見えてしまうが、いくらが妥当かという客観的な数字などない。しいていえば市場全体の平均が大体このくらいであるということと比較するぐらいしかない。つまり、株価は企業の成長性というようなきれいごとでは語りつくせない。では一体、なぜ株を買うのかといえば、株を買うということは、価値を買うのではなくて値段を買っているものだと思いたい。単純に今の値段より上がると思うから買うのである。

つまるところ、こうした価格分析は役に立たない。とりわけ、これから日経先物に取り組もうという読者にとっては無縁であろう。ただ、企業業績が発表されるときなどは今期の実際の利益と来期の利益予想が出てくるので、上記の数字は比較するときに便利だというだけだ。特に日本ではPERが、米国ではEPSが重視されていることだけを念頭に置いておけばよいだろう。EPSで見てもPERで見ても、株価を測る物差しは同じなのである。

「相場のことは相場に聞け」というが、市場で付いている値段だけがすべてであり、値段があるから事後的に価値が決まるのだ。価値を考えていたら株は買えない。ライブドアの時価総額は7千億円だったそうである。持っている実物資産が1000億円くらいだったとしても、利益の規模はたかだか10億円単位の会社である。それなのに7000億円という時価総額は何を意味するのか。会社の生み出す価値というよりも値段を追い求めた結果だろう。

この点では、株価指数先物を買うのと現物の個別株を買うのに違いはまったくない。 さらに日経平均株価は株価の集大成なのだから、値段を買っていくのだという傾向がよりいっそう強くなる。現行の水準に意味を見出そうと思うこと自体が間違っている。ましてや実際に平均してみないと今の日経先物の値段が信用できないなどと言っていたら話しにならない。また先物の場合は、下落に対して売るという方向からも簡単に入れるので、より値動きには敏感になる必要がある。

景気のいいことを示す指標が出たからいって、日経先物が上がるというものではなく、あくまでも値段は相場自身が決定しているということを忘れてはいけない。価値はどうなっているかよりも値段がどうなっているか、なのである。これは為替でも金利でも変わらない。この値段にはすべてが織り込まれている結果であると考えるべきである。値段の動きをよくみるクセをつけておこう。下手なニュースよりも一番頼りになる情報と言えるかもしれない。値段の動きをみるうえでのポイントみてみよう。