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第2章 外国為替取引の種類と値動き
主要な通貨とは何か A基軸通貨について
通貨の信頼性が値段を決める根本であるということを1−1で述べましたが、通貨はその信用力を背景に取引されます。古代ローマ時代にはローマ共和国が作った通貨が帝国内で信用される通貨として流通したように、通貨の価値は、その国力を表わすと言えます。産業革命以後世界で力を持ったのは英国だったので、かつては英国ポンドが基軸通貨として、ポンドを中心に他の通貨との交換レートが決められていました。しかし20世紀に入って産業力としても米国が英国を凌ぐようになり、第二次世界大戦後に米国中心の新しい世界秩序が構築された際に、ドル金本位制(=ブレトンウッズ体制)が敷かれました。
このドル金本位制というのは、米国がドルと金の交換を保証するというもので、このために各国は国際取引にまつまる決済や外貨準備の通貨としてドルを使用し、基準の通貨としたのです。そして基軸通貨はUSドルとなりました。しかしこのブレトンウッズ体制時は、ドルに対していくらという固定相場制で、あくまでも戦前の金本位制をベースにしたものでした。
1960年代末には米国の保有する金が半減したため、1971年に金とドルの交換が停止され(=いわゆるニクソンショック)、73年から主要国による変動相場制が始まることになります。
これは裏を返せばそれまで長らく続いて来た「金」という世界共通で価値が認められている物質の裏づけなしで、アメリカという圧倒的な超大国への信用を背景にした取引に変化したということになります。つまりアメリカという国への信用のみが裏づけになるわけです。
金の裏づけがなくても資金を決済できることは、経済のグローバル化を促進する要素となり、外国為替市場はこれ以降増加の一歩を辿っています。冷戦下のもう一方の勢力であった旧ソ連邦や東側世界の国々、またアジアの新興国がアメリカを中心として形づくられた経済活動にどんどん参加してきているため、今後もさらに外国為替市場は増加していくでしょう。
1980年代に日本が経済力をつけ、ジャパンアズナンバーワンなどと言われ、円の自由化と国際化についての議論が国内ではなされましたが、これも経済力のあるうちにもっと国力を高めるという目的だったのでしょう。基軸通貨になるということは、さまざまな意味で国にとっては国力をさらに維持する手段ともなります。たとえば巨大な財政赤字を抱える米国がさほど困らないのも、米ドルが基軸通貨であるためです。各国にとってドルを保有するニーズが存在するので、米債の発行には実際のニーズが伴っている面があります。日本が巨額な財政赤字を円建ての借金国債を、人気タレントを起用してまで毎年穴埋めしなければならないという事態とは全く違うのです。今は基軸通貨でなくなった英国ポンドにそれなりの値段がつけられているのも、円に比べて国力としての総合的な信用力が高いということも言えるかもしれません。どちらにしても円が国際通貨になる道は今となっては遠い過去の夢のように思われます。
自国通貨の信用力が保たれている間は、多少国内景気がずっと悪くてもそれなりに国は立っていくのです。むしろ赤字国債の大量発行という供給側とペイオフ解禁から日本国債に資金が向かうという需要側が存在するなか、払えない借金をインフレによって解消する、すなわち日本国債を買った国民に借金を上手く転化して逃げるという策に国が進むかもしれないという危惧が現実性を帯びて来た今、個人としていかに自分でお金を上手くリスクを取りつつ増やすかを考える方が重要なって来ているように感じます。
いずれにしても現在の基軸通貨は米ドルです。ユーロが誕生してからはユーロ自体に加盟各国の金融政策を合わせるのが難しいという問題を抱えつつも、徐々に国際決済や各国の外貨準備通貨としての使われ始めたことからユーロが第二の基軸通貨としての力を持って来ています。2004年の国際決済銀行(BIS)の調査でも、ユーロの対ドルでの取引が全体の約9割を占めています。