HOME > 外国為替について > 第2章 外国為替取引の種類と値動き > 主要な通貨とは何か D通貨の特徴

第2章 外国為替取引の種類と値動き

主要な通貨とは何か D通貨の特徴

2004年BISの外国為替取引高調査によると、米ドルが約9割、ユーロが4割弱、円が2割、英国ポンドが2割弱、スイスフラン、豪ドル、カナダドルがそれぞれ5%前後、スウェーデンクローナ、香港ドル、ノルウェークローナが2%前後と続きます。通貨の組み合わせとしては、ユーロ/ドルが28%、ドル/円が17%、ポンド/ドルが14%、オーストラリアドル/ドル5%、ドル/カナダドル4%、ドル/スイスフラン4%、ドル/その他通貨17%となっています。

外国為替取引に参加する場合には、十分な流動性があるかどうかは大変重要な要素になります。いくら将来有望な市場だからといっても、あまり流動性のない新興国の通貨を売買するのは、リターンも大きく見込めるとはいえ、そのリスクもそれ以上に大変大きいものになりますので、注意が必要です。

主な通貨ごとの特徴を見てみましょう。

<米ドル>
ドルは基軸通貨ですから、ほとんどすべての他通貨に米ドルの動きが影響を及ぼします。基軸通貨の機能として、@国際決済に使われる、A各国の外貨準備高として保有される、ということが挙げられるでしょう。米国という国の信用を盾にしているのが現在の制度でこれが揺らぐことは現時点では簡単にはないでしょう。しかしながら超大国なのでその政治・軍事の問題から米国一国の財政や経常収支の状況は通貨レートの値段として変動要因の素を作ります。外国為替市場においてはアメリカにまつわるニュースは欠かせない情報源となります。

<ユーロ>
ユーロという域内統一通貨の誕生前までは、ヨーロッパは各国別に通貨を持っていました。ひと昔前にヨーロッパを旅した事がある方ならおわかりと思いますが、パリ(フランス)から電車に乗ってバーデンバーデン(ドイツ)の駅で降りても、ドイツマルクを持っていなければ銀行か両替所のある市街地に行くまでのタクシー代も払えないという状態でした。ユーロは、第二次大戦後にヨーロッパの西側グループとして発足したEEC(欧州経済共同体)(ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ)から発展し、政治分野での統合も目指したEU(欧州連合)によって新設された通貨です。

現在(2005年4月時点)ユーロを採用している国は旧EEC加盟国以外にも、スペイン、ポルトガル、オーストリア、アイルランド、フィンランド、ギリシャを加えて計12カ国となっています。しかしEU加盟国であるにも関わらず国内的な同意が得られずに、イギリス、スゥーデン、デンマークの3カ国はユーロを通貨として採用していません。

また2004年に新たにEUに加盟したポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、リトアニア、ラトビア、エストニア、スロベニア、キプロス、マルタが加わり、2007年から10年までにはユーロ導入を行う予定です。

EU加盟国全体では米国よりも人口も2倍弱あり、中東、アフリカ圏などとの結びつきも強いため、経済地域としての潜在性からその通貨であるユーロにはドルに代わる通貨としての期待もあります。実際に最近では中東の原油産油国の決済取引やロシアをはじめ各国政府の外貨準備にも取り入れらており、需要が伴っているため、発足当初の対ドルレートから値段からみると3〜4割も上がりました。

期待も大きいユーロですが、まだ乗り換えなければならないハードルもたくさんあります。金融政策についてはECB(欧州中央銀行)で行いますが、政治的な統合も進んでいないうえ財政は国別で政策を行っていかねばなりません。たとえば通貨の価値に関わりの深い金利について考えた場合、ドイツの経済があまりよくなくて、スペインの景気は絶好調という場合に、金利で景気の調整を取るのは難しくなります。また各国の財政をGDP比3%以内に抑えるという協定で、ユーロの主導的な立場にあるドイツとフランスがそもそもそれを期限内に達成できない可能性があり、ユーロという通貨にとっての不安定要因はまだ解消されていません。

ユーロにとってはこのようなニュースが値段の動きに影響を与えています。

<ユーロ>ユーロという域内統一通貨の誕生前までは、ヨーロッパは各国別に通貨を持っていました。ひと昔前にヨーロッパを旅した事がある方ならおわかりと思いますが、パリ(フランス)から電車に乗ってバーデンバーデン(ドイツ)の駅で降りても、ドイツマルクを持っていなければ銀行か両替所のある市街地に行くまでのタクシー代も払えないという状態でした。ユーロは、第二次大戦後にヨーロッパの西側グループとして発足したEEC(欧州経済共同体)(ドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、ルクセンブルグ、オランダ)から発展し、政治分野での統合も目指したEU(欧州連合)によって新設された通貨です。

< 円 > 
経済的には1980年代後半のような勢いがなくなったとはいえ、日本はいまだに世界第2位のGDPを有する国で、貿易収支の黒字額は10兆円規模、世界一の対外債権(ほとんどが米国)の保有国です。ですから日本の景気や金利政策などが市場に与える影響は大きいものです。しかし日本国の債務は2004年12月末時点で750兆円にも達していて、これは日本のGDPが年間500兆円前後ですから150%にものぼります。政府債務の比率からすると、米国50%、英独仏などが30〜40%だということを考えても、大変高い数字となります。日本の景気だけなく、このようなニュースが円の動きを見ていく重要な要素をなってきます。

またアジア通貨の代表格であるため、アジア関係の話も円には影響を及ぼします。特に日本との経済的な結びつきも近年強まり、世界経済全体への影響度も大きい中国と中国人民元のニュースや地政学的に近い北朝鮮や台湾の政治問題も円にとっては、重要な要素です。

<ポンド> 
かつてはポンドが世界の基軸通貨の役割を果たしていました。しかしその主役がUSドルに代わっていくなか、サッチャー政権が大規模な改革を行うまでは、第二次大戦後イギリス病と言われるほど長期に渡って経済が低迷していた事もあり、ずっと通貨の値段もドルに対して長期下降トレンドを描いて来ました。92年にはヘッジファンドから大量のポンド売りを仕掛けられ、統一通貨ユーロへの参加もその後見送ることとなりました。

しかしポンドは金融取引の中心地として多くの金融機関の拠点となっていることや、ドルに対してユーロと同じような動きをするものの、流動性が少ないこともあり投機の対象になりやすいため、かなり値動きは荒い通貨です。悪魔の通貨と云われる所以もこの荒い値動きのせいでしょう。ユーロと動きは似ていますが、ユーロ圏とは違い英国の中央銀行が機動的に金融政策を行えるという点で、英国の貿易収支、イングランド銀行の金利政策などがポンドの動かす要素として重要になって来ます。

<オーストラリアドル> 
英連邦の属するオーストラリアは、ポンドと並んで高金利通貨の代表格です。金利と通貨は密接な関係も持っていますが、現在のポンドやオーストラリアドルのように高金利の通貨に対しては、金利の高さを魅力に金利の低い通貨に対して買われるという傾向があります。ゼロ金利政策が続く日本で、オーストラリア債など高利回りの債券が人気になっていることを考えれば、それに伴ってその通貨が買われるというのはご理解頂けると思います。

また資源輸出国の通貨は、資源国通貨あるいはコモディティ通貨と呼ばれますが、オーストラリアドルは、高金利通貨の側面とこのコモディティ通貨の側面を両方持っています。鉄鉱石コモディティ通貨は、商品相場やインフレとの関わりが強くなりますので、オーストラリアドルの動きを見ていく場合には、石炭、鉄鉱石、原油などの鉱物資源の市況との関係、またアジア向け輸出が50%以上あるので、輸出国の景気などが動きをみるポイントになります。

<カナダドル> 
オーストラリアドルと並ぶ代表的なコモディティ通貨で、オーストラリアドルと並んで近年商い量が増えています。これ以外のコモディティ通貨として、南アフリカランドやノルウェークローネなどもありますが、いずれもオーストラリアドル、カナダドルに比べると商い量は4分の1もあるかどうかです。どの通貨も産出するコモディティの価格に連動する傾向があります。カナダはニッケル、金、石油などの資源国なので、これらの商品価格との連動も抑えましょう。

<その他通貨>
∵スイスフラン
緊急事態や世界的に大きな混乱が起った場合に避難する先としてスイスフランが買われる傾向があります。よく「有事のドル買い」と言われます。金に代わる実質ドル本位制の下では何か紛争や戦争が起った場合などは、ドルを避難先にするという意味で1980年代までは買われるということがありました。しかし冷戦の終わった90年代以降は中立国であるスイスのフランやスゥーデンのクローネが反応するようになっています。

∵中国人民元
経済新興国と呼ばれる通貨のなかでも、米国、日本という経済大国との結びつきが大変強く、全体の数字として中国はすでに世界大7位のGDPとなったため、中国人民元の動向は通貨市場を見ていく上で今後重要になってくるでしょう。

中国人民元は1994年に公定為替レートと学科調達レートが統一されて市場の需給をベースに値段が決める管理変動相場制が取られていますが、発足当初の1ドル=8.7人民元から96年に1ドル=8.29前後の人民元高になった後はずっとこの水準のまま変動していないため、実質固定相場に近い状態が続いていました。また中央銀行がドルを買い支えているため、外貨準備高は増加の一途をたどり、2004年には香港を除いた外貨準備高だけでも日本についで世界第2位で5000億ドルを超えています。

人民元切り上げの圧力がずっと続いていますが、2005年7月に96年以来初めて切り上げが行われました。しかし米国を中心にまだ十分ではないとの圧力も増しています。切り上げだけなく、通貨制度も含めて今後変更が行われる可能性も大きいでしょう。

エネルギーや食料なども輸出国から輸入国へ変わるほど急速な経済発展を遂げていますので、原油や穀物など商品市況に与える影響も大変大きいため、人民元そのものの値段もさることながら、為替市場の台風の目になる可能性があります。