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第5章 ニュースで見るアプローチ
国の収支
収支の言われるもののなかでも、お金の入りと出、資産と債務がどうなっているかが財政収支である。財政収支は家計にたとえるとわかりやすい。収入と支出、資産と借金をあらわしているといえよう。財政収支の悪化は国力の低下、または財政の硬直化を促すので、市場経済にとっても良いはずがない。米国の場合は月ごとに財政状態の発表は行われ、国民それぞれの納税者意識も高いので、国の歳入や歳出には高い関心があるとされている。
しかし日本の場合は国の借金額について論議を呼ぶことはあっても、基本的に政治家が予算作成にしか興味を示さないため、財政に関する問題が話題になるのは通常は夏の概算要求や年末の大臣折衝のときくらいで、年度末の国会での予算案審議の頃には国民的な注目度は薄いというのが実情だ。国の決算報告や会計検査は、あまりマスコミの話題として取り上げられていない。
それでも国債の発行残高や地方の借金の話しが出てくると、やはり株式市場にとっては良いインパクトを与えない。膨大な国債の残高などが新聞の一面を飾るときなどは、朝から日経先物をショートで臨みたいものだ。同じ意味で、火曜日と木曜日に行われる「国債の入札状況」も金利動向に影響を与えるため見逃せない。国債の市中消化が不十分だと、いずれは金利上昇をもたらすわけで、株式市場にとってはマイナスだ。あまりサプライズは起こらないが、午後1時の入札結果の発表前後は気をつけたいところだ。今は大して問題にもされていないが、そのうち日本でも国債暴落などがあったりして、不用意に足元をすくわれるかもしれない。日経先物といえども知らない顔をしてはいられない。
収入以上の支出をしており、その穴埋めを赤字国債で回しているという赤字垂れ流し状態の国家財政とは異なり、対外的には日本は今でも世界一の債権国家であり続けている。毎月、発表される「貿易収支」は、単純に輸出分と輸入分の差額であると考えてもよかろう。輸出競争力の高いとされている日本の貿易収支は恒常的に黒字のままだし、米国などは常に赤字のままである。
10年ほど前まではモノの移動だけで集計されていたが、それでは実態が十分に表されていないということで、金融収支なども含めたサービス部門の輸出入もカウントされるようになった。貿易収支の数字は非常に注目を集めるときもあれば、まったく市場から無視され続けているときもある。しかし貿易収支はGDP統計に大きく影響を与えるので、気に止めておきたい指標のひとつだ。
金融面での投資状況を見る上では、財務省から「対外・対内証券投資」という数字も月ごとに発表されており、これは直接的に外国人がどのくらい日本の市場の有価証券を購入したのか、または売却したのかを見る上で参考になる。
外国人の買い越しが予想以上に多かったとなると、過去の数字であるにかかわらず、株式市場はそれを好感し、大いに活況を呈したりするからだ。同様に米国サイドの方でも外国人による証券投資の動向は毎月発表されているので、注目に値する。外為市場に影響を与え、円相場も揺さぶられたりするからだ。