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第5章 情報収集の仕方
情報の種類 @経済指標などの公的な統計発表
(3)インフレ動向
(3)のインフレ動向について、経済指標で主なものは卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)が代表的なもので、そのほか不動産の価格動向やCRB指数などがあります。
モノの性質上、CPIはPPIにくらべて3ヶ月くらい遅れて数字に表れてくるといわれています。したがって、インフレ動向を判断するには川上の数字であるPPIの方が重要だということになります。また物価指数にはすべての品目を加味したものと、それから値段変動の激しい食品とエネルギー(つまり無くなるもの)を除いたコアというものの2種類が発表されます。それぞれに市場の予想が立っているので、どちらを重視すべきかはケースバイケースになります。基本的にはコア指数の部分を重視するべきなのですが、最近のように原油価格高騰が続くと、全体の部分の数字の重要度も増してきます。また川下レベルでどの程度の物価上昇を招いているのかを測るためにも、CPIも無視できなくなってきました。
インフレ指数で最初に反応するのは、債券をはじめとする金利商品です。長期債のほうが値段のブレが大きいので、市場がどちらに解釈しているのか判断するには絶好です。というのは、為替相場はモジモジしたままで動かないことがあるからです。米国の物価指数の場合、大きな数字が出れば金利上昇を読み込んで素直にドル買いでよいと思いますが、目に見えて為替相場が動いていないときこそ注意が必要です。普通金利の上昇には債券相場は価格下落で反応しますが、大きな数字の割には債券が下落しない場合、注意が必要です。たとえ最初のアクションだけで債券価格が動いても、1,2分ですぐに元のレベルに戻ってくるような場合も要注意になります。
しかしながら大きな数字が確認できて、しかも債券相場の下げが止まらないような場合は、為替相場が動いてなくても目をつぶってドルを買ってみることが重要です。まして、それまでドル売りをキープしていたのならば、ますますドルは買い戻さねばなりません。動いてないのに損切る、これがポイントであり、分岐点です。
石油危機のとき以外、日米ではあまりインフレに対して注意を払っていないのが実情です。むしろ軽いインフレならば歓迎といった姿勢も見受けられます。しかし欧州となると事情がまったく違ってきます。欧州は20世紀に入って2度の大戦によって、ハイパーインフレを何度も経験し、インフレのもたらす甚大な悪影響を常に身近に感じてきました。そこで欧州の国々はドイツを代表選手として、インフレ抑制を国家の最大目標に掲げています。したがって、政策金利の変更にあたって、金利の上げに関してはどこよりも先んじて動くのに対し、多少景気が後退していても、また失業者が街にあふれ出していても金利の下げには消極的な態度をとってきました。
経済成長や雇用を重んじる日米と、インフレ懸念を重要視する欧州とは、過去に幾度も金利政策の協調すべき場面で対立することがありました。94年から世界的リセッションに入りかけたとき、欧州、とくにドイツが最後まで金利の引き下げを拒み続けたことで、相対的に金利の高いマルクに資金が集中して、記録的なマルク高を演じたこともありました。