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第5章 情報収集の仕方

情報の種類 B政治、軍事などの時事ニュース

まず戦争や軍事についてですが、そうしたニュースはいうまでもなく、為替市場をはじめ、あらゆる金融市場に莫大な影響を与えます。予期できない突発的な情報の代表格といえるでしょう。お金というのは経済にとっては例えていえば血液のような役割なので、その流れが滞ったり、流れの方向が変わる、もしくは大きく新たに需要が見込まれるなどの要因が出現した際には、マーケットは著しく反応します。

とくに2001年にニューヨークで起きた同時多発テロ以降は、テロリズムの動向から目を離せなくなってしまいました。

世界の政治情勢やパワーバランスにもよりますが、当事国の通貨はやはり売られます。以前までは「有事のドル買い」という鉄則のようなものがありましたが、ユーロの創設以降はユーロが避難通貨として機能しているようです。

ユーゴスラビアやアフガニスタン、イラクに見られるように、戦争自体は突然始まるわけではありません。何らかの原因があって、それに向かって段階的に開戦にいたるまでの準備とコンセンサス作りがなされますので、マーケットは徐々にそうした危機感を織り込んでいく場合が多いのです。ですから実際に戦争が始まってみると材料出尽くし感から、それを契機に相場は反転したりします。実際イラク戦争の開戦時は、株式市場は安値圏から脱して勢いよく戻りましたし、それまで売り込まれてきたドルも必然的に買い戻されました。戦争突入以上のリスクはもうこれ以上ないということなのでしょう。

しかしテロの場合は事情が異なり、だれも予見できません。同時多発テロが起こった時のように経験値も未知数であるような場合、そのインパクトはかなり大きくなります。米国はすべての市場が半月以上にわたって閉鎖を余儀なくされました。しかしその後で同じく起こったトルコやスペイン、ロンドンでのテロの場合には、被害規模ももちろん違いますが、想定外ではなかったという点もあったのでしょう、短期的な影響しかありませんでした。不謹慎ではありますが、「慣れ」とは恐ろしいものです。

日本の場合は、北朝鮮の軍事的脅威や台湾問題などの特殊事情ももっています。デマであっても、そうしたニューズには敏感にならざるをえません。円相場は過剰なほど反応しますので、日本にとっての弁慶の泣き所だと思って常に気を配っておかなくてはいけません。

しかしながら、実際のマーケットではどうかというと、参加者全員がホットなニュースやどこで何が起こっているのかを完璧にウオッチできるわけではありません。また、CNNやBBCであっても速報性にはかなりの疑問があります。先に相場のほうが異変を察知した動きを示します。たいしたニュースもないのに株式市場が急落したり、いきなりドル円が2円近く落ちたりしてはじめて、いったい何が起こっているのかという疑問がわきます。

すぐにテレビはつけますが、大体まだ何のブレーキングニュースもやっていません。もし、反対のポジションを持っていたのなら、問答無用に損切りしましょう。報道機関が取り上げてからでは遅きに失する場合が多いのです。「自分の知らない世界の片隅で、とんでもないことが起こっているかもしれないのだ」と常に念頭に置いておき、また「自分が触れることのできるニュースは実際に起こっていることの10分の1にも満たないのだ」と思うくらいの謙虚な気持ちで、出直しを図るのが唯一できる対処の方法です。

政治問題に移りましょう。政治的なニュースの判断も一様ではありませんが、ただ判断の基準としては、そのニュースが経済の安定やお金の流れ、消費者マインドに今後どのように影響を与えていくかがキーになると思われます。

ただ先進国は比較的に政治的には安定しており、いきなり民主主義国家だったものが共産主義や軍事政権になることはまずありえません。「小さな政府」を良しとするきれいごとの裏には、肥大化した官僚機構が存在し、ゆえに政治的安定が保証されているという皮肉な結果になっているのが実情のようです。

そうしたなかでも、さすがに選挙のときは政治問題で盛り上がります。4年に一度の米国の大統領選挙や中間選挙も、今となってはイデオロギー対決もなく、民主党と共和党の明確な政策の違いもみられないのですが、それでも現職候補が落選したりするとショックは大きく、一時的にせよ政治的不安定を恐れて、株は売られ、ドルも売り込まれます。もちろん現職が再選したからといって、必ずしも市場に楽観ムードが流れるとは限りませんが、外国が受ける印象だけで判断すると、政治的安定の継続はその国の通貨や株を買いで反応することが多いようです。

日本の選挙については90年以降の動きをみてみると、株価に関しては衆院選の後は株が下落し、参院選の後は上昇するという傾向がみられます。しかし為替に関していえば、一般的には与党勝利で円買い、野党勝利で円安という、あくまでも米国と同じく一時的に政治的不安的を材料とはしますが、アメリカの大統領選挙のような影響力はないように思います。

経済力が十分についていない国の方が、政権交代などの政治動向で市場が受ける影響度は高くなります。石油などの資源大国にも関わらず、政情が不安定である国々はたくさんあり、先進国との結びつきもあるという点は、ドルやユーロといってもその間接的な影響は無視できません。