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第5章 情報収集の仕方
情報の種類 @経済指標などの公的な統計発表
(4)財政収支・貿易収支
(4)の貿易収支や財政収支という言葉はよく聞かれますが、その詳細な中身をアカデミックに説明することは、為替取引を始めようとしている人にとってはあまり意味のないことなので割愛します。貿易収支というものは輸出と輸入の差額であること、財政収支というのは国の歳入と歳出の差額だとおおざっぱに覚えておいておくだけで問題はないと思います。
貿易収支が黒字であるということは、製品やサービスを輸出して稼ぐ外貨の量が輸入で支払うべき外貨の量を上回っているということです。現状の日本がまさにそうなのですが、対外債権国といいます。余った外貨はそのまま持っていてもしかたがないので、必然的に自国通貨に交換される運命を背負っています。よって貿易黒字国の通貨は買われることになり、また逆に貿易赤字国の通貨は売られやすいことになります。
そこで貿易統計の数字が重要になってくるわけですが、米国のように恒常的に貿易赤字が続いている国では単月ベースでの赤字幅の増減が問題となります。先に述べたように貿易はGDPを構成する一要素でもありますので、世界経済の機関車たる米国の貿易収支には特に注目が集まります。予想された赤字幅よりも大きなものとなった場合は文句なくドルは売り込まれ、為替市場ではドルの値段が飛び、しばし混乱することがよく見られます。
財政収支についてですが、実際には世界のほとんどの国々が巨大な累積赤字を持っており、それを自国が発行する国債、すなわち国の借金でファイナンスしているというのが現状です。また政治のテーマは、累積した財政赤字の解消ではなく、単年度ベースで赤字をさらに増やさないことのほうに向かっているのが世界の潮流です。プライマリーバランスともいいます。
日本の例をとるとよくわかります。累積した国と地方の借金は年々増加の一途をたどり、1000兆円に迫ろうとしています。子供から老人まで頭割りで、一人当たり1千万円の借金があるのと同じことです。一家4人で4千万円、これは空恐ろしい数字であり、これを返済する方策を政治家であれ官僚であれ提示する人がだれもいないのが現状で、足元の調整にだけ四苦八苦する姿しか見えてきません。
財政収支の悪化はその国が他から受ける信用力の低下を意味し、やがてはその国の発行する国債を買おうと思う人がいなくなることとなり、国債価格暴落の引き金を引く危険性をはらんでいます。そうなると問答無用に、その国の通貨が売られるのは必然といえます。ここ最近のことでも、いくつかの中南米諸国が財政収支の悪化から国債が暴落し、果ては通貨の暴落にまで至った経緯は生々しく残っています。
米国は双子の赤字で長年苦しんできました。当面ドラスティックに改善する見込みもありませんが、それでもドルが一方的に下がり続けないというのは、日本にもユーロ圏にも米国と同様な深刻な赤字問題で悩んでいる証拠だといえます。