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第8章 マーケットに臨む姿勢

順張りと逆張り

順張りとは相場が動いている方向を攻めることをいい、逆張りとは相場が動いている方向とは逆の方向を攻めることを指す。要するに、1,2,3,4と進んできたところを、次の5を買っていくのを「順張り」という。4や5を売っていくのを「逆張り」という。

相場に入るときや相場に対する戦略として、よく「順張り」か「逆張り」かということが言われる。当然、順張りは相場の動く方向と同じ方向で入るので、そこが転回点にならない限りリスクは少ない。しかし逆張りは相場を反対の方向で入るのでリスクは高くなるが、そこが転換点となれば利益が大きくなるというメリットがある。どちらも一長一短があるということだ

順張りをしようと思うと、いちばん高いところを買っていくのだから、勇気が要る。自分が5を買っても、次の人が6や7を買っていってくれないと意味がない。順張りを敢行する理論的背景は、1,2,3,4と来ているのだから、この後も5,6,7と続くだろうという自然の流れを重視することである。続くかどうかは相場を見ていれば判明するわけで、5が高値になって4や3が出会い始めたら3で損切ればいいということになる。

一方、逆張りはどうか。4や5で売るということを正当化している根拠は、その値段が今のところ高値圏での売り行為であり、だれよりもいいところ、すなわち高いところで売れているという満足感である。しかし、そのあと相場が下がってくれるという保証はどこにもない。1,2,3,4と来ているのに、自分が売ったからといって相場がそこから急に反転して下がりだすと考える不自然さがともなう。

日経先物は純然たる先物取引であるから、評価損からは常に免れていたい。利幅が少ないと思っても、儲かるのであれば、より健全なポジショニングを心がける必要がある。まずは日経先物で相場に対するときは、つねに順張りを狙っていくのを基本とするべきである。

「相場のコツは安く買って、高く売ることだ」というが、実際にはどこが安いのか、終わってみなければわからない。相場がかなり下落してきて、これは安いと思ったところで買ってみたのはいいけれど、その後もズルズルと下がりっぱなしになるのではたまったものではない。せめて人為的に出来ることがあるとすれば、高くなってきた相場を見たら「相場は強くて誰もが買いたがっているのだ」という信念を持って自分も恐れずに買ってみるということぐらいだろう。過去の5分間に1,2,3,4と上がってきたという事実を認識した後に、初めて5を買っていくという行動を取るのである。将来のことは予測不可能で神のみぞ知るところだ。攻め方としては「高く買って、より高く売りつける」しか方法がないのではないか。それが結果的に「安いところで買って、高いところで売れた」になるだけのことだ。もちろん、高いところを買っていくのだから、反対に3あたりが出会い始めたら「ちょっと違うんじゃないか」ということで、素直に失敗を認めて損切りも視野に入れるようにしよう。

2003年のいわゆる「ソニーショック」のとき、日経平均株価は7600円台の最安値をつけた。順張りなので7600円をショートで攻める。ここが当面の最安値になるということは事後的にしか判明しないのだから、この時点での行動としては正しい。進行方向が反対を向いてしまった状態、すなわち7700円や7800円、最悪でも8000円まで戻る過程で損切りは完了しているだろう。順張りで攻めていっても、この局面ではやられてしまうことは今となってはわかる。結果的に相場が7400円、7200円と進まなかっただけなので、それはそれでよしとするのである。

しかし、ここを安いと思って逆張り、すなわち買った人は大儲けである。順張りが正攻法だといいながらも、逆張りのほうがたくさん利益があがるというのも皮肉なものではある。しかし、リスクとリターンはちゃんとマッチしていて、買う人はもっと下がるかもしれないという巨大なリスクをその瞬間とっているだけなのだ。逆張りは上手く行った際の爽快感はたまらないものがあり、得られる利益の大きさは魅力的なものではあるが、少なくとも今動いている方向とは逆のことをやっているので、その分だけリスクは高くなっているといえる。

その2ヶ月後の「りそな危機」に対する政府方針で株価が暴騰したが、動き始めた価格を見て、新たに順張りで臨めば十分に利益が取れるはずの相場だった。リスクとの見合いを考えれば、まずは順張りが基本姿勢なのである。

日経先物はレバレッジが効いていて、使いようによっては非常に危ない。利益を得ることが目的であるが、運用方法の健全さということも無視できない重要な要素なのである。「相場のカシラとシッポはくれてやれ」というのは、相場の端っこで無用にあがいて、得るべき利益を逃したり、出さずに済んだ損失を計上してしまうことを戒めているものだ。したがって順張りで臨む限りは相場の端っこでは必ず参戦していることになる。このため、この場面では何度でも損切りさせられるであろう。しかしながら、最終的に「アンコの部分を総合的に取る」ことができればよいという立場をとるのである。